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「進展アリ、ってね。」
ブルーノは懐から煙草の箱を出し、一本口にくわえた。葉巻のような茶色いフィルターシガレット。火を点けて、一口吸う。甘い匂いが広がった。
「お姫様が舞踏会に行くぜ。」
「……っ!」
レイが真っ直ぐブルーノを見た。そしてすぐ向き直る。
「そうか…。」
「何の間だよ。計画通りだろ?」
「分かってる。」
「どーだか!」
ブルーノの声が上がる。バーボンが適度に回っているのだろう。レイは不快そうにブルーノを見返した。
「絡むなよ、酔っ払い。」
「酒は大人の嗜みだぜ?一口如何?」
「俺はまだ19だ。」
ブルーノが差し出してきた小瓶をレイは手で払った。
「あぁ、未成年だったっけ?残念な!」
誇らしげにブルーノはバーボンを飲んだ。二口ばかり飲んで、息をつく。そしてバーボンを高々と掲げた。
「記念すべき作戦開始の日だぜ。祝杯祝杯!」
「…一人で?」
痛い所を突かれたブルーノは苦い顔をして歯噛みした。
「葛もヒュースケンも付き合い悪いッつーの。シルクは仕方ねーけどさぁ…。あぁ、後お姫様もか。
ってかまってちゃんか俺!どんだけ寂しいんだよ。」
自嘲してブルーノは高らかに笑った。反対にレイの気分は一向に上がらない。独り善がりな思考に囚われたままだ。
「ブルーノ…何でそんなに舞い上がれるんだ?」
足下を見ながらレイが云った。街は相変わらず遠い。ブルーノはその問いに、幾分平静に戻ったようだ。
「冗談抜きで訊くぜ?レイ。今更止めたいとか、無いよな。」
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