2.再会と遭遇

17/35

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/804ページ
屋上。 シオは屋上に出る扉の前で前屈みになって息を整えていた。追跡してくるアインを振り切った結果だ。想像より執念深く、速く彼女は追いかけてきた。かなり慌ただしく走らされたシオは激しい動悸を鎮めながら、屋上に出た。 やっと念願の静寂が待っている。 そう思っていた矢先、シオは思わぬ人物に遭遇した。 「ふっ、ふっ、ふっ!どうだレイル!俺の華麗なるフットワーク!」 疎らだった黒が目立ち始めた金の短髪の青年、久住月虎が上半身裸でシャドーボクシングを披露していた。爽やかな笑顔に汗が弾ける。細身だがしっかりした筋肉が備わった体だ。 「いいんじゃない?少し脇が甘いけど。」 「マジか!よーし見てろぉ!」 シャドーボクシングを見ていた青年のアドバイスを受けて、月虎は勇んで再開する。 再び繰り出される月虎のパフォーマンスを見ていた青年は紺色の髪にコバルトブルーの瞳をしている。整った目鼻立ちには余裕そうな、和やかさがあった。 シオも良く知る人物だ。 レイル・コンスタンティノーブル。 二人は足元にサンドイッチやフライドチキン、ハンバーガーが入ったバスケットを並べている。昼食中だったようだ。 「ほら、そこ。そこのアッパーカットの時に…」 云いかけてレイルはシオに気付いた。涼やかな両目がシオに真っ直ぐ向けられる。 「おや、久し振り。」 「あ…」 シオは硬直した。アインの時とは違う硬直。レイルの眼から発せられる、独特の空気に当てられたのだ。 レイル本人は無自覚だろうが、彼の持つ空気は緩やかで鋭い。対象をあっと云う間に包み込む力がある。
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加