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観念したシオは歯切れの無い口調で話し出した。
「あの精霊は、俺の中に入ったんです。」
抽象的な表現にレイルは目を細めた。
「中に、入った…?融合したって訳かい?」
「はい。」
「魂で取り込んだみたいな感じかな?
例えば、
、、、、、、、、、
召還体を還すように。」
「多分。」
アンセムとの邂逅をシオは全て記憶していた訳じゃない。だがあの状況で想像出来る事はそれしか無い。
「その融合の影響は?多分、君を悩ませているのはそれだと思うんだ。」
レイルが本人より事情を知り尽くしているのでは無いかと思えてきた。シオは抗えず流れのままに話す。
「自分の中に別の人間の記憶が現れたんです。たくさん、たくさん。多分、一人の記憶が。その時の感覚と一緒に。」
「…誰のものか分かるかい?」
「分かりません。」
レイルのリアクションはヲリエ達とそれに似ていた。シオは嫌な気持ちになる。他人を見るような目を向けられるのが、シオは堪らなく嫌だった。
「…あまり話すのは嫌なんです、これ。自分の中の他人が大きくなる気がして…。いつか俺が、乗っ取られるんじゃないかって、不安になって…。」
レイルが一瞬慌てて取り直した。
「あぁ、ごめん。無遠慮だったね。」
シオは黙って俯いた。早く話を流そうとしている。
「君がよそよそしくなった理由は分かったよ。掘り下げてすまなかった。的確な助言は出せそうにないなぁ…。」
「いいんです。」
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