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「落ち込まなくていいよ。君の苦しみは分かる。蔑ろにはしないさ。」
レイルのフォローは温かい。頭を捻って答えを編み出す。
「俺にとって君は天使かもしれないんだよ。」
シオは目を丸くした。レイルの発言があまりに唐突だったからだ。
「どういう…意味…?」
「たははっ、ゴメン!気持ち悪い云い方だね。」
自虐的にレイルは笑った。
「でも俺はそれくらい君との出会いに運命を感じているんだ。出来る事なら共に来て欲しい。いや、きっと来てくれる。そんな確信を感じさせてくれる。」
「それは…本当に俺だから、ですか?」
シオには甘過ぎる言葉だった。疑心のような、ささくれた感情が胸に差す。シオが向ける目線からレイルは背いた。
後ろめたい思いがあるのだろうかと、シオは勘ぐる。
「…そう、君だからだ。」
レイルの言葉はどこか物々しい。
「君と、君の隠されたルーツ全てだから、だ。」
「それが俺のモノじゃなくても?俺が、俺じゃなくても?」
シオはレイルの言葉に食い付く。身を乗り出し、レイルに詰め寄った。レイルはシオの剣幕を正面から受け止める。シオを見やる瞳は哀愁に震えている。
「…それを見つけるのは君自身だ。」
口にするだけで痛みを覚えるように、レイルは苦しげに言葉を紡いだ。シオは察しつつも、今は答えを求めた。
「本当に、俺が…シオ・クォールだと…。」
「分からないよ俺には。分からない。誰より先に知るのは君だけだ。俺はただ…君の答えを待つだけだよ。」
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