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ジョゼフと同じような事を、レイルも云っている。シオは軽い失望を覚えて、身を退いた。
シオは膝を抱えてまた浮かない顔をする。
「顔下げてると幸せが逃げてくぜー。」
不意に、予期せぬ方向から声が来た。
驚いて顔を上げると、月虎が屈み込んでいた。いつの間にかシャドーボクシングを止めていた。
「あれ、月虎終わってたの?」
「おーい何だその云い草!俺っちのパフォーマンス全無視しやがって!」
プリプリ怒る月虎にレイルは瓶のコーラを渡した。
「まぁまぁ。シオの相談に乗っていたからさ。」
「ンだよー…。」
仁王立ちでコーラを喇叭飲みし、月虎は口を拭った。空き瓶を床に置き、シオを見下ろす。
「相談って?」
「…それは…。」
「勘弁してやってよ月虎。話すだけで辛そうだったからさ。」
云い渋るシオをレイルが庇った。
月虎は疑問が尽きないようだったが、それ以上の詮索は控えた。代わりにシオを訝しげに見やる。
「ってかシオってこんな根暗だったっけ?照れ屋だけど暗くは無かったと思うんだよなぁ。」
「月虎、失礼だよ。」
ズバズバ云い放つ月虎をレイルが窘める。シオは肩身が狭い気持ちで益々縮こまった。
「事実じゃんよー。」
ドカッと腰を下ろし、月虎は手近にあったフライドチキンを手に取る。
「お前、レイルを止めるって啖呵切ったらしいじゃん。度胸ある奴だと思ったんだけどよぉ。」
フライドチキンにかぶりつき、咀嚼しながら月虎は云った。鋭い黒い瞳がシオを射抜く。
「何であん時、お前は啖呵切ったんだよ。何考えてたんだ?」
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