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ブルーノの瞳は厳粛だ。答える事しか許さないと云わんばかりに。レイの顔を見ないでいるのは厳粛さを和らげようとしているのだろうが、厳かさは十分レイに伝わっていた。
「…逃げないよ。逃げる気はない。」
レイは淡々と答えた。しかしブルーノを満足させるには足りなかった。
「当たり前だぜ。退き際なんてありゃしない。すべき事が分かってんだからな。なのに自分だけどっか行っちまうのは…卑怯だ。」
「…分かっているよ。」
足をあげて、レイは膝を抱えた。憂いと苦悩が瞼に乗る。
「…だけど集まったのは五人だけ。後の五人は…」
「同窓会じゃねーんだし、皆集める必要は無いよ。ま、好き者の集まりだ。」
「…俺は、ちょっとだけ、怖いんだ。」
たっぷりとブルーノは煙を吐いて、レイの語りに耳を傾ける。
「あの日の俺達の想いは間違っちゃいない。自信はあるんだ。だけど…今のサンドハーストを狂わせたのがそれなら、俺達が止めに行かなきゃならないのなら…。」
「俺達はどう生きればいいんだ、ってか?」
ブルーノは煙草をくわえ、深く吸った。レイは頷く。
「…過去にけじめをつけなきゃならないのは分かる。だけど…じゃああの時信じていた想いは…!」
「間違っちゃいない!」
高らかに云って、ブルーノは立ち上がった。レイは目を見開いてブルーノの見上げた。
ブルーノは胸を張って、仁王立ちになる。毅然とした態度で、夜の街と向かい合う。
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