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「シオの気持ちは分かったが、ソイツは心配無用だぜ。」
月虎が胸を張った。
「レイルの側には俺達がいるからな。どんな修羅場でも守り通すぜ!」
「頼もしいなぁ。」
「どこにいこうが、どうなろうが…一緒だぜ。」
舞い上がっていた月虎だが、語尾だけ、寂しく震えていた。レイルは横目で月虎を見やり、切り替えるように笑顔を作った。
「何はともあれ、愛されている俺は幸せ者だ。」
レイルの嫌みに聴こえない誇らしげな態度にシオは複雑な顔を浮かべた。レイルの事は決して嫌いじゃない。だが彼は、柔和に見えて頑固だ。容易く自分の目的は曲げない。身の周りの人間の為に掲げた目的は、身の周りの人間の為に曲げる事はしない。
それが彼だ。
レイルの意志の固さを知る毎に、シオは自分のいたらなさを思い知る。
不思議と心が軽くなった気がした。先程まで胸に巣くっていた閉塞感が晴れている。
「レイルさんにとって…」
楽になった心でシオは云った。
「レイルさんにとって、サンドハーストは唯一の居場所だから…?失われた家の、代わり…」
レイルと月虎が静止した。唖然とした顔でシオを見ている。
特にレイルは声には出さないが心底驚いているようだ。目が大きく見開かれている代わりに、唇は固く引き結ばれていた。彼は驚きのあまり矢継ぎ早に問い詰めると云う行為を避けている。
衝撃を受けながらも黙していようと、彼は努力している。
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