2.再会と遭遇

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「え…?」 レイルと月虎の表情から、漸くシオは自分の発言の意味を悟った。 知る筈の無いレイルの過去を、シオは口にした。シオ自身、無意識にそれを口にした。 「お前、どっからそれを…!」 月虎が身を乗り出す。迫られてもシオには答えようが無い。 シオはしどろもどろに、口をパクパクさせる。記憶を懸命に弄る。 『お前、家が無いのか?』 途端に再生される回想。教室の中で、レイルと向き合っている。 『無いっていうか…初めから無かったっていうか。』 『…孤児だったのか?』 『違います。両親はいたし、家もあった。ただ…そこは俺の家じゃなかったんです。あらかじめ失われた家…みたいな。』 『マザー・テレサかよ。』 『からかわないで下さい。結構、真剣なんですよ。』 『あぁ、悪い悪い。』 『だから、サンドハーストしかないんです。俺には…サンドハーストしか無いんです。』 この記憶に心当たりは無い。レイルを見ている主体はシオじゃない。発している声もシオのモノじゃない。 今までのそれと同じ、別の誰かの記憶。 シオは両手で頭を抑えた。 溢れ出す記憶。 頭を満たす他者。 自我が揺らぐ心地。 シオは必死に記憶を忘れようとする。頭の片隅に追いやり、忘却の淵に落とす。 だが適わない。 シオの尽力も虚しく記憶は、他者は肥大化する。
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