61人が本棚に入れています
本棚に追加
/804ページ
サクリファイスは普段のたゆたう動きでは無く、意志を持った炎のように舞い上がり、変形しながらシオを包み込もうとする。
「落ち着けレイル!止めろ!」
「教えてくれないなら、見つけ出すまでだ、この目で、この手で!」
サクリファイスがうねり、集束してシオの中に入ろうとする。
「レイル、レイル!」
「真実を、本当の事を、約束を…!」
月虎の声は届かない。
レイルは独り、シオに執着する。
「っ!」
シオの胸に入りかけたサクリファイスが衝撃で弾き飛ばされた。レイルは明確な敵意を剥き出しに、衝撃が来た方向を睨む。
「誰だ…?」
「シオ・クォールに触れるなっ…!」
小柄ながらも猫のように肩を震わせ、怒りをたぎらせるアインが出入り口に立っていた。
「君はっ…!」
シオを連想させる外見の彼女にレイルは一瞬戸惑いを見せる。だがレイルのそんなリアクションに構わず、アインは右手を突き出した。
「セノーテ…」
術を唱えるなり、アインの周囲に青い粒子が発生する。
「アトモスフィア…?!」
レイルの戸惑いは更に高まる。アインが解放した力の為に、益々彼女の姿がシオと重なる。
「レイルっ!ボケッとするな!」
月虎の一声でレイルは覚醒し、右手にプラズマを発生させた。
しかし、それより速くアインが粒子の集束を完了させた。
「アルカナドロップ!」
粒子で満タンになった水の塊が五発撃ち放たれた。
最初のコメントを投稿しよう!