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「くっ!ソリッドリムーブ!」
レイルが指を鳴らすと空間に波紋が広がり、アルカナドロップを受け止め散逸させた。だが防御は出来たものの波紋は思ったような形にはならない上に虚脱感が体に纏わりつく。
「魔力中和…!」
「レイルっ!退けよっ!」
次は有無を云わさぬ力で月虎がレイルを引っ張り込んだ。
「月虎っ…!」
「黙れっ!」
睨み付けるレイルを月虎が一喝した。
「お前…おかしいぞ!いつものお前じゃねぇ!何バカになってんだよっ!」
「君だって知っているだろ…!あの人はっ…!」
「今はいねぇ!そうだろっ?!それにシオを巻き込む理由にはなんねぇ!」
「だけどシオは…!」
シオに目を移したレイルと月虎は目を見張った。
魔力中和粒子を纏ったアインがシオの側に屈み、彼の体に粒子を送り込んでいる。
「あっ…ぐっ…!」
苦悶の表情でシオはアインを視認した。アインが魔力中和粒子を操っているのに気付き、瞳が強張っている。
「大丈夫。助かるから。」
アインは魔力中和粒子を漲らせ、更にシオの体へ注ぎ込む。
シオは段々と体が安らいでいくのを感じた。硬直していた精神が軟らかくなり、胸の中で解け合う。
「君…は……?」
先程より軽やかな口調でシオが尋ねた。アインは微笑み返す。鋭い威圧感しか見せなかった彼女が初めて見せた笑顔。
シオを安堵させる不思議な温もりがあった。
「あなたと同じ、約束の証。」
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