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「…来てみりゃあどういう状況だ、これ?」
アインは出入り口にまた現れた別の気配を察し、素早くセノーテを引っ込めた。
出入り口に立っているのは逆立てた銀髪の、華奢な体つきの青年だ。怪訝な顔でアインとシオを見てから、レイルと月虎に目を移す。途端に、唇が歪んだ。眉間に険しく皺を寄せ、灰色の瞳を酷く淀ませる。
「平和な屋上じゃねぇのかよ、此処は。なぁ、レイル!」
スヴェインは挑発的な調子でレイルに呼びかけた。一瞬即発の危うさがある。レイルの反応次第じゃ一戦交えても構わないと云わんばかりの荒々しさが表れていた。
レイルはスヴェインの姿を認め、一瞬で高ぶりを沈めた。平静を装いつつも、スヴェインの出方がどう転ぼうが受けて立つ姿勢だ。
「そっか、今日からだったね。元気そうで何よりだよ、スヴェイン。」
レイルの気さくな返答を聴くなりスヴェインは舌打ちする。
「スかしてんじゃねぇよ。」
淀みが深まる。
「留守中に色々やりやがったらしいな。知らないと思ってんの?」
「アマデオから聴いたんだろ?口が軽いなぁ、彼も。」
「だったら話は早ぇーじゃん。」
スヴェインは懐から一対のナイフを取り出した。ロザリオをあしらった銀色のナイフ。両刃のそれは鋭く研がれている。
レイルの目つきが変わる。
「止めなよ、スヴェイン。今日の俺は、ちょっとイライラしてるんだ。」
「丁度いいじゃん。刻んでやるよ。」
「まだヲリエさんが忘れられないんだ。」
レイルの一言にスヴェインの淀みは明確な殺意に変わった。
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