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スヴェインが素早く踏み出た。ナイフが届く間合いまで一気に距離を縮める。
「云、う、なぁぁああああ!!」
レイルの鼻先目掛けてスヴェインはナイフを突き出す。
だが、ナイフを握る手は月虎に掴まれた。スヴェインが鋭く月虎を威嚇する。月虎の握力は強く、スヴェインのナイフはレイルの顔面の手前で動かない。
「あぁ…?!」
「よぉ、落ち着けよ。な?」
人の良い笑顔を浮かべる月虎だが込めた握力は尋常じゃない。スヴェインは殺意を月虎にも向ける。
「知らねー顔だ。何様?」
「レイルに因縁あるみたいだけどよ、今日はコイツ様子おかしいんだ。勘弁してやってくれねぇか?」
「引っ込んでろよ…!」
スヴェインは片方のナイフを月虎に突き立てようするが、背後に戦意を感じて振り返る。
アインが粒子を集束させ、スヴェインを狙っていた。
「あぁ…?テメェはなんだ。」
「…邪魔するな。」
「テメェの獲物じゃねぇだろうが。引っ込んでろ。」
「お前ら止めろって!昼間っからケンカなんてよ…!」
アインまでがいきり立つのを見て月虎は大声で制止を呼び掛ける。だがアクセルが踏み込まれたように、スヴェインやアインは怒りを加速させていく。屋上に漂う緊張感が極限まで張り詰めた。
「…スヴェイン。」
レイルがゆっくりと口を開いた。
いつもの、包容感がある声だ。
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