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「シルクも云ってただろ?レイ!あの日の俺達は何も間違っちゃいない。ただ俺達がやった過ちは、残してしまった事だ。ウェルが死んだ事に対する怒りや悲しみを残してしまった事だ。だから…俺達が拭わなきゃいけない。未来にそんなモノ持って行っちゃいけないって、伝えなきゃなんねぇ。
そうだろう?!」
鮮やかな高説の後、ブルーノはレイを指差した。
「もう囚われるなよ?レイ!お前の未来も、曇っちまうからな!」
ブルーノは清々しい男だ。気障な素振りが目立つが、大らかでポジティブな人間性は皆を惹く。レイの鬱屈した心情は、ブルーノによって幾らか楽になった。
「…あぁ、ありがとう。」
レイは静かに笑みを浮かべて礼を云った。
レイの表情を見てブルーノは無邪気な目で覗き込んで来た。
「あらら珍しいね、レイがデレるなんてさ。」
「やめろ。」
近付いて来たブルーノの顔を押し返し、レイはそっぽを向いた。ブルーノはちゃかしながら身を引き、跳び上がってフェンスを越えた。
「さぁて、行こうか。お姫様をお見送りしなきゃね。」
「…アインか。」
レイも続いて跳び上がり、フェンスを越えた。
「まだ慣れないか?可愛い顔しているじゃない。」
「シルクがいつまで保つか分からないだろ。危険な賭けだ。」
レイの鬱屈がまた戻って来た。ブルーノも晴れない顔になる。だが、押し隠して、いつもの口調で話す。
「今更だぜ。シルクが決意したんだ。水を差しちゃいけない。」
「…だけど、あの人達の協力があるとは云っても…。」
レイに戻ってきた鬱屈はまた深まる一方だった。
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