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アインはセノーテの発動を解き、シオの側で立ち尽くしている。レイルと月虎への警戒心は消えていない。傍らでシオは漸く平静を取り戻したようだ。
「あぁ、シオ!無事みてぇだな。」
月虎が側に寄るとアインが立ちはだかった。一切シオに触れさせない気らしい。賺さずシオが立ち上がり、肩を掴んで制した。
「いいよ、アイン。止めて…。」
「でもアイツは…!」
アイツは、恐らくレイルを指している。アインの警戒は主にレイルに向けられていた。
「悪かったよ、シオ。ごめんね。」
月虎の腕を払い、レイルは進み出た。シオは目を反らした。錯乱している状態でもレイルの変貌は感じ取っていた。何より、レイルの目が酷く陰っている。
「…いいです。」
嫌われた、と月虎に冗談めかした顔でレイルは肩を竦める。
「もし、また何か思い出したら教えてよ。是非ともね。」
レイルはそれだけ云い残して背中を向けた。月虎は呆れ顔でシオとアインに頭を下げ、追随する。
「…アイツ…!」
「何で…そんな嫌うんだ?」
アインは去り行くレイルの背中を睨み続けている。
「アイツは…あの人を苦しめている。」
「あの人…?」
アインがいきなり振り返る。シオはドキッとした。
「それより、今は君の事を…」
「あ、後にして…。」
言葉を重ねる毎に距離を縮めてくるアインにシオは後退る。大きな瞳を密着させんばかりに近付けられるのはシオには堪らなかった。
「今から…寄りたい所があるから…。」
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