3.インディケイション

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「やぁ、大目玉を食らったんだって?凱旋早々話題をばらまくなんて流石だ。全く羨ましい。」 指定された廃棄プラントを訪れたスヴェインを出迎えたのは高らかな軽口だった。 朽ちて、無残な残骸と化した廃棄プラントの前で両手を広げて歓迎してきた男。サイドを剃り、トップをドレッドヘアに纏めた髪、浅黒い肌、鷲鼻に痩せこけた顔。ギョロギョロと動く瞳からたっぷり自信を放つ。 「だが安心しろ。他の連中がどれだけ冷遇しようが俺はお前を歓迎する。俺達はお前を歓迎する。拍手し、喝采し、抱擁する!」 アマデオ・シュルツの、癇に障る程大袈裟なリアクションにスヴェインは早速険しい顔立ちをした。 「白々しいんだよ、テメェは。」 「おや、まぁ。どうしたって云うんだ。偉く機嫌が悪そうだ。歓迎の気持ちが足りなかったかな?シャンパンくらいは見繕うべきだったかね。」 ツカツカ通り過ぎようとするスヴェインと肩を並べ、アマデオはまくし立てる。スヴェインは何も返さず、アマデオと共に崩れた外壁からプラントの中に入った。 「あぁ、そうか。帰ってきて早々生徒会の奴らに絞られたのか!やれやれ災難だったね。残念だったね。」 今閃いたように振る舞うアマデオの白々しさに辟易しつつ、スヴェインは漸く立ち止まってまともにアマデオを見る。 「…耳が早いな。」 「地獄耳も磨かれるもんさ。人間の特性は成長だよ。」 「成長してくれよ。またアジトを変えられたら迷惑。夜中に食いもんパクってアジトバレるなんてな。」 「…耳が痛い。」 苦笑いしてアマデオは肩を竦めた。
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