3.インディケイション

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「…何で付いてきてるの?」 保健室。 ペネロペ・ドジャーに云ってベッドの上で横になっていたシオの側で、アインは神妙に座っていた。仏頂面で付き添われるとシオも落ち着かない。結果一睡も出来なかったシオは心底嫌そうな顔をして一声掛けたのだ。 「いや。心配だから。」 だがアインも頑なだ。梃子でも動くまいと益々重く座を占める。 「いいって!君にここまでされる筋合いなんて…」 「おーい、静かにしなー。」 ベッドルームのドアを開き、ペネロペが顔を出して注意した。だが厳粛な響きは無く、どこかシオをからかっているようだ。 これもシオの悩みの種だった。アインを連れて保健室に入ってから妙にペネロペの頬が緩い。やたらニヤニヤしてシオを見てくる。何が楽しくて笑いかけているか分からず、加えて手助けしようともしない彼女にシオは重ねて苛立ちを増していった。 「もう放っといてよ…。」 シオは布団を頭まで被って丸まった。今はアインとまともに向き合うだけ疲れる。 だがシオから拒絶のサインを示されても、アインはへこたれる様子は無かった。 「ねぇ、新しく思い出した記憶なんだけど。」 アインの切り出しに、シオは布団の中でハッとする。布団が作り出す暗闇の中でも、アインの影がハッキリ認識出来た気がした。
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