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「分かっている範囲でいいから。教えて欲しい。」
シオは無言を通した。答える気はサラサラ無い。
意固地に無反応を装うシオに、アインは歯痒くなったのか、シオが入っている布団の繭に手刀を叩き込む。
「いった…!」
貯まらず顔を覗かせたシオにアインは一気に接近した。
「教えて。」
「何で…そんな…強引なんだよ…!」
「私は知りたいの。」
涙目で不平を垂れるシオを気にもせず、アインは続けた。
「どうして…?」
「君の変化は重要だから。この先、必ず影響する。」
「何でそんな事っ…」
云い掛けて、シオは疑問を覚えた。彼女は何かとシオに起こる変化を把握している。それこそシオのような存在を既に知っているように。加えてアトモスフィアに酷似した、いや恐らくアトモスフィアそのものであろう魔法を彼女は使用している。
そして屋上で彼女は云った。
自分とシオは同じ存在だと。
「君は誰なんだ…?」
「忘れた?私は君と同じ約束の」
「違うっ!そんな曖昧な言葉じゃない!君が人間なのか、そうじゃないか知りたいんだ!」
制御出来ない感情の高ぶりが声に出る。思わず怒鳴りつけたシオの目は望む答え以外を拒絶する凄みがあった。
そんなシオを目の当たりにして、アインは表情を強張らせた。
「それは…」
「答えろよ!」
先程まで引っ込み思案だったシオはもういない。厳粛に凄む彼は、逆にアインを追い詰めていた。
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