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「アンタは寝てな。」
アインを追うシオの目線をペネロペが遮った。
「荒れてるからって当たり散らすもんじゃないよ。らしくないねぇ。」
「…アンタは何を知っているんだ。」
シオはペネロペを睨んだ。強く抗議する視線を向けられてもペネロペは平然としている。
「あたしに何を知っていて欲しいんだい?」
「あの子の事だ!監察員が了解しなきゃ、あんな子が入る訳…!」
「物事がシオの都合通りに行く訳無いだろ。グチャグチャ文句云っても詮無い事さね。」
のらりくらりと返すペネロペにシオは怒りを込み上げる。
「あの子は誰なんだ?」
「本人に訊く事だね。」
「ふざけ」
「生徒のプライバシーは守らなきゃね。」
相変わらずの調子ではぐらかし、ペネロペはベッドルームを出て行った。
残されたシオは歯軋りしながら、枕を殴った。自分の中で込み上がる怒りは行き場も無く、自分の中で飽和する。
「皆、俺をどうしたいんだよ…。放っといてくれよ…!」
外からも内からも、シオを取り巻くモノ全てが彼を悩ませる。耳障りだった。
シオはベッドに身を投げ出し、枕に顔を埋めた。思考を澄ませようと努めた。シオのいつもの解決策だ。
自分を取り巻く全てから背を向け、シオの中にある虚に没入する。少しばかり心が安らぐ。安らぎを感じる事で、シオは自身を感じられる。
何もかもが疎ましかった。
自身の変化を皮切りに連鎖していく周囲の変化。
真実を与えられず突き放される自身。
茫洋として、本当の解決策も見いだせない現状。
だが、背を向けて得た安らぎにシオは救われた事は無い。
一度も、無い。
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