3.インディケイション

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保健室から出たアインはひたすら教室に向かって歩いていた。ひたすら、前へ前へと足を運び続ける。 足がもつれた。手を壁に置き、フラついた体を支える。歩く事に割かれていた思考が平静に戻る事で、途端に惨めさが蘇る。シオの前で狼狽える事しか出来なかった自分を思い知る。みっともない自分を叩き潰してやりたかった。だが平静になった思考が、遮二無二に暴れる無意味さを知らせてくる。 アインは再び歩き出す。何をする訳にもいかないと知ると尚更気が曇った。 アインは教室へ続く階段の手前でふと立ち止まった。 一人の少女が階段から降りて来た。スラリとしたプロモーション、そして女性らしさを体に備えている。栗色のボブヘアーに澄んだ緑色の瞳。顔立ちは端正で、気品がある。 見覚えがあった。 同じクラスのシェリル・ハウルロイドだ。 アインは目を合わせただけですぐ反らした。彼女からしたら興味の対象外だからだ。 「アイン、どこ行ってたの?」 アインは構わず階段を上った。シェリルを過ぎる。 「ねぇ、いいかな?」 邪険に扱われてもめげずにシェリルはアインに追随した。 「放課後、来て欲しい所があるんだけど。空いている?」 「放っといて。忙しいの。」 アインは頑として取り合わない。シェリルはアインの顔を覗き込みながら、用件を伝えようとする。 「今日じゃなくても、明日でもいいんだけど。」 「君は、何?」 「あ、自己紹介まだだったね。私はシェリル・ハウルロイド。サンドハーストの学生雑誌NOISEの編集やってるの。」
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