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「どうして…?まさかあの症状が?!」
「その症状が出たの。」
シェリルは目つきを変えた。それまで柔和だった彼女が初めて見せた疑念の眼差しだ。
「なんであなたが知っているの…?初対面の筈なのにシオの事も知っていたし、ずっとくっついていたし。」
「…シオは…。」
アインは出掛かった言葉を、首を振って消した。
「NOISEで、話す。」
「じゃあ、取材を…?」
「記事にするのは、駄目。でも話すだけならいい。どの道、NOISEの四之宮ヲリエには話すつもりだったから。」
NOISEのチーフの名をアインが口にした事にシェリルは怪訝な顔をした。シオ同様、アインが知っている筈の無い名前だ。
「そう…分かった。」
アインは前を向いた。瞳の翳りは失せている。顔には頑迷さが表れている。
何か、決意を秘めているように見えた。
シェリルはそれ以上問わなかった。アインが抱えているモノに底知れなさを感じたからだ。
アインは時折瞼を閉じて、何やら思案している。先程見せた柔らかな表情はもう見えない。開き掛けた心は再び閉じられている。
さっきの恥じらっている彼女はもう見えないのだろうか。
教室はもう間近だ。
中に入るまで、シェリルは胸の奥で切なさを噛み締めていた。
アインを閉ざすモノに恨めしさを覚えながら。
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