3.インディケイション

18/18
前へ
/804ページ
次へ
「どうして…?まさかあの症状が?!」 「その症状が出たの。」 シェリルは目つきを変えた。それまで柔和だった彼女が初めて見せた疑念の眼差しだ。 「なんであなたが知っているの…?初対面の筈なのにシオの事も知っていたし、ずっとくっついていたし。」 「…シオは…。」 アインは出掛かった言葉を、首を振って消した。 「NOISEで、話す。」 「じゃあ、取材を…?」 「記事にするのは、駄目。でも話すだけならいい。どの道、NOISEの四之宮ヲリエには話すつもりだったから。」 NOISEのチーフの名をアインが口にした事にシェリルは怪訝な顔をした。シオ同様、アインが知っている筈の無い名前だ。 「そう…分かった。」 アインは前を向いた。瞳の翳りは失せている。顔には頑迷さが表れている。 何か、決意を秘めているように見えた。 シェリルはそれ以上問わなかった。アインが抱えているモノに底知れなさを感じたからだ。 アインは時折瞼を閉じて、何やら思案している。先程見せた柔らかな表情はもう見えない。開き掛けた心は再び閉じられている。 さっきの恥じらっている彼女はもう見えないのだろうか。 教室はもう間近だ。 中に入るまで、シェリルは胸の奥で切なさを噛み締めていた。 アインを閉ざすモノに恨めしさを覚えながら。
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加