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皮肉を込めたつもりは無かったが、エリスには響くものがあったようで、忽ち彼女は鬱屈した顔になった。
リクは慌てて取りなす。
「あぁ、そんなつもりは無いんだ!別にエリスのせいじゃねぇし!まぁ、さくっと行って、適当に終わらせとくよ。」
エリスは気丈だが仲間や友人に対しては甘い。リクに生徒会からの呼び出しを伝えるのも本当は辛い筈だ。
エリスはリクが生徒会にいい感情を持っていない事を知っている。普段は仲の良いクラスメイトだが何かの拍子に敵対するような危うげな間柄にある事も、エリスは良く理解している。
そんな彼女を労るのもおかしな話だが、辛い立場にいるエリスを無碍にする事は、リクには出来なかった。
反逆者としては失格だろう。リクは自覚している。甘えを捨て去り、例え友人でも切り捨てて己の道を行くのが良くも悪くも正しいスタンスだ。
だがリクはそれが出来ない。リクの抱える弱みの一つだ。
それでもリクは切り捨てなかった。弱みすら抱えて、力に変えていく方に、彼は賭けたのだ。
「よっし、じゃ行ってくるわ。案内してくれよ、エリス。」
「うん、本当に、ごめんね。」
エリスの銀色の瞳は悲しげだ。強大な権力を前にした卑屈さは無い。
素直に、苦しげだ。
きっとエリスも、リクと同じ弱みを持っているんだろう。
同じ弱みを感じられたから、リクはエリスの気構えを踏みにじりたくなかった。
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