4.ビフォア・スコール

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「リク…。」 立ち上がったリクにエリスはすり寄った。リクは思わず緊張する。揺れた黒髪から良い香りがした。 揺れる大きな瞳と、憂いを噛む唇を近付けて、エリスは云った。 「辛かったら幾らでも取りなすから。埋め合わせもするし…ゴメンね!」 「エリス。」 リクの声が低くなった。 「普通にしょっぴけばいいんだよ。お前はそうする立場で俺はそうされる立場。普通にやりゃいい。俺は構わないから。 分かってるよ。」 ちょっと説教臭かったかと、リクは自省した。こういう時に優しい言葉を並べられる程器用じゃない。 「…分かった。そうだね。ちゃんと、立場を分からなきゃ。」 だがエリスは微笑んだ。憂いは幾分か抜けている。 「俺なんかに気を使わなくていいんだぜ?」 少し安堵したリクが何気なく云ったのを受けて、またエリスは憂いを顔に浮かべた。 しまった。 今度は何を間違った? リクは眉を顰めてまた自省の念に駆られる。だが結論が出る前にエリスが「行こっか」と先導し始めた。 「あ、ああ。悪いな、アレン。」 「いいよ。後で連絡頂戴ね。」 「おう。」 有耶無耶なままエリスに付いて行くリクをアレンは見送った。 碧眼が深く光を湛えた。
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