28.ファントムペイン

27/31
前へ
/804ページ
次へ
「・・悪い、シオ。体、余計に傷付けちゃった・・・。」 レイルの拳はウェルキン、正確にはシオの胸部に打ち込まれていた。力なく、ウェルキンは地面に落ちた。 「ぐはっ・・・!」 ウェルキンは立ち上がろうとするが力が入らない。堰をすると血が出てきた。 「亡霊は大人しく冥界へ。そのうち俺も行きますよ。」 レイルが立ちはだかった。ウェルキンは見上げる。逆光を受けて陰になっているレイルの姿は死神を想わせた。 「・・お前は亡霊なんかじゃない。」 「いいですよ。優しさなんていらない。俺の事を憎み、恨み、呪う権利があなたにはある。」 「背負うな、もう・・。お前は殺してなんかいない。あの時お前はお前にとって一番正しい事をした。」 「慰めはもういらない。俺は俺にけじめを着けるまで進む。」 レイルが腕を上げた。プラズマが再度集結する。 レイルは無表情だった。色の一切を消した顔。ウェルキンは悲痛に襲われた。レイルのそんな顔は見た事が無かった。 「・・さようなら。」 プラズマが肥大化し、巨大な塊になった。何時ウェルキンの頭上に落ちてきてもおかしくない。 ウェルキンは瞼を落とした。一度死んだ身だ。痛みは怖くない。 ただ、心から悲しかった。 「ごめん、シオ・・もっと、お前には・・いい・・人生を・・」
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加