28.ファントムペイン

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「っ!!!」 レイルが唐突に振り返った。 茂みから影が躍り出た。影は迅速にレイルに接近してくる。 「邪魔をっ・・・!」 レイルはウェルキンに落とすつもりだったプラズマを動かした。 「ゾーンルイン!!」 巨大なプラズマが放たれ、影を巻き込んだ。強烈な熱が立ち込め、辺りの木々が一瞬で焼失した。 だが影は回避していた。レイルと擦れ違い、ウェルキンを回収して木々の奥に消えた。 「ちっ・・!」 レイルは舌打ちした。プラズマを両腕に結集させ、森の奥へ入って行った。 「・・オ!シオ!!」 呼び掛ける声に気付いてウェルキンは瞼を開けた。見知った顔が目の前にあった。ヲリエだ。戦闘をしてきた後らしく頬に擦り傷や土汚れが付いていた。 「・・あぁ・・。」 「良かった、無事で・・・。無茶しないの!レイル相手にやり合うなんて・・!」 ヲリエはウェルキン、正確にはシオの頭を撫でて周囲を見渡した。警戒しているのだ。 「あぁ、全くだ・・あいつ強くなってるな。」 ウェルキンは上体を起こし、頭を掻いた。ダメージはまだ残っている。 「寝惚けた事云ってんじゃないの。とりあえず、リントと合流して。あいつの相手はあたしがするから。」 「お前にも無理だって、あれは。」 「バカにしないでよ、あたしだって・・・・って、シオ!」 ヲリエがムッとした顔で振り返った。ウェルキンを睨み付ける。 「先輩にお前って何?」 ウェルキンはキョトンとした後、溜め息をついた。 「あぁ~そっか、そこからか・・・。」 ヲリエが訝しげにウェルキンを見た。彼女も気付いたようだ。 普段のシオには無い口調、仕草。目の前のシオの体の中にいる人格が全く別の人間である事に。
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