28.ファントムペイン

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「ウェルさん・・・?!」 ヲリエが目を丸くした。マジマジとウェルキンを見詰め、両手で顔や体をベタベタと触った。ウェルキンは迷惑そうに身を捩る。 「やぁめろって。体はまんまシオのだから。」 「本当に、ウェルさん・・・?」 「正真正銘、ウェルさんですよ。」 ウェルキンがヲリエを引き離し、ヲリエの頭を撫でた。 「久し振りだな、ヲリエ。」 ヲリエはまだ驚きが引かないようだった。膝を着いて、ぼんやりとウェルキンを見つめ続けた。 「蘇るなんて・・・」 「蘇ったんじゃないよ。ただ俺の人格がシオの体にダウンロードされているだけだよ。さっきから体と心が噛みあわなくて参ってる。」 「何でそんな事が・・?」 「シオの体を構築している中核は俺だからね。まぁこれくらいは・・」 ウェルキンが話していると、突然ヲリエが我に返ってウェルキンに詰め寄った。両肩を掴んで前後に揺らす。 「そ、それより!」 「な、何だよ?!」 「シオは?!シオの人格はどこにいったの?!」 「痛い痛い痛い痛い!落ち着けって!」 ウェルキンはヲリエの両手を引き剥がした。涙目で痛む体を抑える。 「はぁ・・シオは、眠っている。」 「眠っている?」 「ちょっと、ショックが強すぎたみたいでね。気を失ってしまったんだ。」 「ショックって・・?」 「・・お前は、知らないかもだけど・・。」 ウェルキンは躊躇いがちにヲリエを見やりながら、話した。 自分とレイルに纏わる、悲痛な過去を。
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