29.ナイト・サイド・リベリオン

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梢が焼けていく。葉の群れを焼き貫き、地面に次々と穴を穿っていく。ヲリエとウェルキンは状況の変化に呼応して、素早く散会した。あれ程生い茂っていた木々が一瞬で炭になり、塵になり、消え失せた。 「・・レイルっ!」 ヲリエの視界に入ってきたのはレイルだった。茂みの奥から悠長な足取りで接近してくる。 「嫌な所を見られたかな、ヲリエさん。」 「アンタ、今のシオが誰になっているか・・・!」 「知っているよ。知った上でこうしている。」 レイルのプラズマは加速度的に増長していた。周囲の物体を片っ端から蒸発させていく。普段の涼やかな立ち振る舞いからは想像のつかない、凶暴で攻撃的なオーラだった。 「此処で二人とも退場してもらう。この先は俺達の演目だ。」 「生憎、あたしもウェルさんも、シオも、退場する気は更々無いよ。まだあたし達は此処にい続ける。」 「レイル・・・お前のやろうとしている事はアドレフォレストじゃない。ただの・・暴走だ。」 ウェルキンが青い粒子を煌めかせながら云った。レイルはウェルキンを一瞥し、クスッと笑った。 「夢の定義って、何だと思う?」 「「・・?!」」 ヲリエとウェルキンは目を見合わせた。レイルは饒舌に語る。 「レム睡眠の際に見る幻覚、子供の頃に作文で書かされる将来の願望・・・まぁ大体こんなものだろうけど。俺はちょっと違う考えを持っているんだ。人の想いが集まった事によって発生する事象、これが俺の夢の定義。俺にとっての夢は見るものでも描くものでも無い。 、、、、、、 起こすものだ。」 「それが・・?!」 ヲリエが警戒を解かずに云った。 「人の想いはマグマみたいなものでさ。普段は地中の奥深く静かに眠っているけど、ちょっとした弾みで爆ぜる。地面を揺るがし、地殻を突き破る程にね。」 語り続けるレイルのオーラが変化する。プラズマの集積体に青白い、靄のような光が混じり更にプラズマを燃え上がらせた。 「今のサンドハーストはそれだ。温度は上がり、膨張している。一瞬触発の状態で、誰かがちょっと刺激を与えてやれば、爆ぜる。」
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