29.ナイト・サイド・リベリオン

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「ヲリエ!怪我は?!」 「困る程じゃないです。」 ウェルキンとヲリエは立ち並び、ディーナ・シーに飲み込まれたレイルを見やった。武器に飲まれたレイルの姿は見えなくなっている。不気味な静寂が辺りを包んだ。 「終わらない、ですよね・・。」 「そりゃあ、ね。」 突然武器が青白く発光し、一瞬で溶解した。そして溶解した金属が燃え立ち、プラズマになった。 「俺にとって物体は全て燃料だ。提供してくれて感謝するよ。」 茹だる程熱を孕んだ空気が喉を焦がす。咽そうになるのをヲリエはじっと堪えた。 陽炎のように揺らめくレイルの姿はこの世の者では無い趣があった。レイルは両手を上げてプラズマを巻き込み、二つのトワイライトバルムンクを精製した。 「遊びは終わりにしよう。幕引きだ。」 レイルが巨大な剣を器用に振るい、隙の無い斬撃を繰り出してきた。 「ソードダンス・タランテラ!!」 「下がって、ウェルさん!」 ヲリエがインディクーム=マンデスを地面に打ち付け、一本のポールアームを作り出した。 「ブリューナク!!」 左手にブリューナク、右手にインディクーム=マンデスを持ち、ヲリエは迎え撃った。何合も何合も激しく打ち合う。 両者一歩も引かぬ接戦を見せるが、次第にヲリエが押されていった。ブリューナクとインディクーム=マンデスが次第に溶けているからだ。ヲリエは何度も魔力で修復して打ち合うが、劣勢は覆せない。レイルの魔力は尽きる気配を見せなかった。 一人と戦っているのに、まるで圧倒的な物量を有する軍隊と戦っているようだ。 ヲリエには見えていた。 レイルが背負う、人の想いの数が。
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