29.ナイト・サイド・リベリオン

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「・・・?また変わったのかな?」 ウェルキン、もといシオの変化をレイルは悟った。彼が唐突に口を閉ざし、項垂れたからだ。 シオの体は黙していた。言葉を語らず、身動ぎ一つせず。項垂れた姿勢を崩さないでいた。 だが、変化は別の所で起こった。 シオの体から生えていた青い翼が揺らめきだした。初めは瓦解しようとしている風に見えたが違った。翼が痙攣しながら脈動しているのだ。それまで幻想的な様だった翼は次第に様々な方向へ捩じれながら、徐々に生々しく変化していく。その形も崩れていく。全ての翼が、その羽毛の一つ一つが伸び出した。そのまま枝葉のように分裂し、やがて磯巾着の触手のように変化していく。 途端に粒子が青黒く変色した。翼、いや最早翼の形ですら無くなった触手の群集は粒子に染められ、青黒くなっていった。 「エクスビーイングの新しい能力・・・って所かな・・?」 レイルが警戒しながら右手にグランドヴェスティージの針、左手にトワイライトバルムンクを構えた。 「ググルル・・・・!」 シオが初めて声を上げた。獣じみた唸り声。触手は既に不気味な脈動を見せている。不気味にうねりながら獲物を探していた。 「訂正しよう。君は亡霊じゃない。」 異形へ変貌していくシオの姿をレイルは淡々を見やっていた。 「君はこれまで失われた想いが泥のようにたまって出来たゴーレムだ。腐臭と死臭を撒き散らす冥界の使徒。俺に焼き付いた呪印。俺を蝕む猛毒。」 「グググルグルルル・・・・・!!!!」 シオの唸りは一層高まる。人の名残は既に失せていた。歯をを剥き出しにし、空色の瞳を青黒く曇らせた様は狂犬病に侵された野良犬だった。 「約束の証、か・・・。」 レイルは微笑んだ。シオと対比的な、軽やかな笑みだった。 「俺からしたら、宿命の証だ。」
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