29.ナイト・サイド・リベリオン

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触手がレイルに迫る。青黒く光る触手は仄暗い水底に見えた。レイルは後退したが、触手は想像以上に速かった。 触手はレイルの右腕に絡み付き、拘束した。レイルは引き千切ろうと試みるが腕が動かない。想像の以上の力だ。 「ダウンエクスカリバー・・・!」 レイルはプラズマの剣を作り上げるがプラズマが突然霧散した。同時にレイルの体に強烈な虚脱感が圧し掛かる。アトモスフィアの魔力中和作用だ。それもこれまでの比じゃない。中和どころか片っ端からレイルの魔力をシオの魔力に変換、シオに吸収されていく。 「うっ・・ぐっ・・・!」 眩暈がレイルをふらつかせる。魔力の吸収スピードが速い。レイルの気が遠くなる。 (何だろう…これ…。) 虚脱感でレイルの意識が霞む。瞼が重く垂れてくる。 (まるであの時のような…) 脳裏に浮かぶ映像がやたら鮮明に映えた。 二年前。 、、、 あの時。 冷たい骸を抱き、絶望に沈んだ時。 情熱が涸れ、心が萎み、血潮すら濁った。生きる意味を、此処にいる理由を無くした。魂も体もゴミのように廃れた。 レイル・コンスタンティノーブルは死んだ。何もかもを失い、風化していくと定められたのだ。
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