30.サイレンス

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「・・ベルクロフト先生。」 得物の傘を差し、倒れた木の幹に腰掛けているのはベルクロフトだった。ヘラヘラと笑み、傘を回している。傍には煙草を咥えたカークスが立っている。バルディッシュを手にしていた。 「先生か。まだそう呼ばれる事が出来るとは。」 「皮肉ですか?」 「いいや、嬉しいよ。」 「立場の違いを明らかにする為の呼称ですよ、ただのね。」 レイルの口振りも穏やかだが、冷めていた。一抹の警戒心がベルクロフトの鼻先に刺さる。ベルクロフトは気を逆立てる事も無く、口調を維持した。 「立場の違いを分かっているのなら、私達がいる理由が分かるかね?」 「さぁ。心当たりが多すぎて。」 「掻い摘んで説明しよう。生徒会とNOISEの衝突が今此処であったのは承知の上だが、私達が此処に来た理由はそれじゃない。」 「あの芋虫のようになった哀れなスパイの件ですか?」 「あー・・彼か。ん~君達が私達の仕事場に無断侵入したのはよろしくない事だが、別段彼そのものの安否はどうだって良い。ユニオンも強いて回収従っている訳では無いようだからね。」 レイルが目を細めた。 「では・・シオ?シオを回収しに来たんですか?あなた達の御仲間を?」 「あぁ、彼か。」 シオの話題にもベルクロフトが変化する事は無かった。傍らのカークスは複雑な想いを込めた表情でシオを見ている。 「正直、回収したい所だね。」 「あなた達の目論みは見事に崩れましたからね。早く計画の修正なり、彼への懲罰なりを急ぐべきでしょう。」 「目論み?」 ベルクロフトがキョトンとした顔をした後、高らかに笑い始めた。
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