30.サイレンス

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「大人を買い被り過ぎだよ、レイル。我々は君達に対して何一つ先んじようとしていない。ユニオンですら君達に出鼻を挫かれたのに我々が此処に来て賢しい計略を敷こうなどと!」 「では何でシオを入学させたんですか?監察員に籍を置かせておいて、俺達の勢いが増した来た頃合いにシオを入学させる。エクスビーイングという能力を持ち、勢力図を狂わせるトリックスターに成り得る存在を置く事で俺達を内部から掻き回す・・筋書きとしてはそれなりのものです。」 「レイル。シオの年頃の子供は学校に行っているべきだ。そうだろう?」 ベルクロフトの返答はレイルの予想から外れていた。 「・・正気ですか?」 「正気だからこそ、必然的に取る選択肢だと思うがね。あぁ、勿論、私の推論だよ。シオを入れたのは彼の保護者の御意志だからね。」 「保護者?・・・・理事長ですか。」 「あの人の考えはあのフードの奥の様に不明で、あの外観のシンプルさの様に自明だ。策略家である前に保護者なんだよ、彼は。」 レイルは頭を掻いた。 「調子が狂いますね。理事長って相変わらずだ。」 「基本君達を傍観し続けるのを生業している役職の長だ。丁度いいじゃないか。」 「あなたもだ。」 レイルが両手を広げた。降参のポーズにも似ていた。 「じゃあ、本題に戻りましょう。あなた達はシオを回収するつもりですか?何の為に?」 「いい加減はぐらかされるのは嫌なようだな。まぁいいさ。単刀直入に答えよう。シオを再度検査する。」 ベルクロフトとは無精髭を撫でながら云った。深い瞳が色眼鏡越しにレイルを映す。
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