30.サイレンス

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花弁のように付いた空間の傷が、漆黒の口を開く。赤く熱された砂の渦が傷の中に流れ込み、虚空の奥へ消えて行った。 「ちっ・・!」 カークスは纏っている熱砂を地面に叩き付けて目くらましにすると、バックステップで下がった。 「グランドヴェスティージ・・・そんな高度な魔法を・・・。」 「成績は常に最良ですよ、俺は。」 「油断するなよ、カークス。大人の威厳は保たないとな。」 茶化すベルクロフトを瞥見し、カークスはバルディッシュの石突きで地面を叩いた。レイルの足元の土が融解し、泥になったレイルに纏わり付く。 「マッドロック。」 振り払おうとするレイルの動きを泥は追尾し、両腕と両足にへばり付いた。泥は一瞬で固まり、拘束具のような外観の石になる。 「これは・・?」 「痛いぞ?」 カークスが指を鳴らすと、レイルの四肢に激烈な痛みが走った。皮膚も筋肉も骨も関係無く、容赦無く潰そうとする圧力。レイルはたまらず倒れ込んだ。 「がっ、はっ・・・?!」 レイルは手近な木の幹に両腕の石をぶつけて砕こうとするが、石は諸共しない。 「土が堆積する圧力は並大抵のものじゃない。硬質化し、圧力を増す岩の重み。骨くらいはあっという間にひしゃげる。」 「くっ・・流石はっ・・マッドロッカー・・・!」 レイルが冷や汗を流しながら、カークスに向かって笑った。
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