30.サイレンス

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カークスは表情を変える。レイルは構わず続けた。 「昔同級生全員を半殺しにしたサンドハースト史上最強最悪の生徒。同級生全員の両腕と両足を砕いた伝説の術が見られるなんて、驚きですね。」 「・・どこから聴いた?」 「昔のNOISEを読めばわかりますよ。随分なご活躍ぶりだったようで。」 レイルが立ち上がった。カークスは舌打ちした。マッドロックの力を受けて尚も立てるとは。両腕、両足の、石の周りが赤黒くなっている。内出血で酷い状態になっているだろう。それでもレイルは立ち上がる事を諦めなかった。 「あなたみたいな人には分からないでしょうね。俺のような人間の気持ちなんて・・・。」 「・・知らなくて当たり前だ。俺とお前は、違う生き物みたいなもんだ。」 「冷酷だなぁ・・!」 立ち上がり掛けたレイルがよろめいた。倒れる。やはり限界だったようだ。何度も立ち上がろうと試みるが、上手くいかない。 次第にレイルは動かなくなった。荒々しくなっていた息も弱まり、終いには聞こえなくなった。 「・・・・・。」 「カークス、感情的になったか?」 「どういう意味すか?」 色眼鏡を掛けた上司にカークスはうんざりした目線を投げかけた。 「最近の学生は耳聡く目敏い。」 「そのようで。」 「その上感受性も強い。気を付けろよ?素知らぬ顔で我々の深みへ入り込む。 、、、、、 今みたいに。」 最後の一言に含みがあるのを察したカークスは、背後から迫る気配を感じた。物云わず振り返り、バルディッシュを一薙ぎする。 手応えがあった。レイルが左手でバルディッシュの柄を掴み、受け止めていた。両手両足の石が砕けていた。痛ましい内出血が、丁度石のラインを辿っている。 「結構狙ったのに・・悔しいなぁ・・!」 「砕いた・・いや、溶かしたのか・・!」 レイルの力は拮抗している。レイルは右手でもバルディッシュを掴んでいた。退けばもぎ取られる。カークスは押し返した。
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