30.サイレンス

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「・・・っ!」 カークスは愕然としていた。 痛む肩が現実を突きつける。酷い有様だ。生徒に先んじられ、得物を奪われた。優勢が容易く覆された。自身の動揺が引き金で。 羞恥が心を覆った。自責の念が容赦なく心を突き刺す。 レイルの目線から漂う優越感がカークスを追い詰める。際へ、際へと。 「カークス!」 ベルクロフトの声が、雁字搦めになったカークスの心を覚醒させた。カークスは思考とは剥離させた伝達回路が体を動かす。 大量の泡がレイルへ飛んで行った。レイルはバルディッシュで振り払う。だが破裂したシャボン玉から超高速で水滴が飛び、レイルの体に当たった。 「ぐっ・・!」 小粒だが一撃一撃が重なると痛みは大きい。レイルはバルディッシュを遮二無二に振るって水滴やシャボン玉を薙ぎ払い、退く。 だがシャボン玉はしつこく追尾し、レイルを執拗に狙った。どのシャボン玉もレイルの両腕を狙っている。 「武器か・・!」 レイルはバルディッシュを放り捨て、両腕にプラズマを蓄積させた。 「バニシングスフィア!」 投げ付けたプラズマの砲弾が爆発し、全ての泡を一瞬で蒸発させた。 「やっぱり足止めくらいにしかならないか。」 頭を掻きながらベルクロフトがカークスの隣に立った。肩にシオを担いでいる。 「バブルガムスラッグ・・・。大した術じゃないのになぁ・・。」 「使い様さ、何事も。」 ベルクロフトは洒脱に返すと、カークスへ向き直った。
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