30.サイレンス

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レイルはバブルガムスラッグを受けて出来た右手の甲の傷を一舐めした。鉄錆の味が思考を冷静に澄ます。 「とんだ茶番劇だな・・。」 シオを連れて行かれた事に対しては引っ掛かるものがあった。監察員の介入は読めなかった訳では無いが、いざシオだけを回収されると、複雑な心境になった。相手の想定を超えたのか、それともこれすら想定の内なのか。 「ん?」 レイルが視線を向けると、倒れているヲリエの傍に人影があった。すかさず接近し、ダウンエクスカリバーを出して切っ先を突き付けた。 「なななっ!!」 素っ頓狂な声を上げて、影はヲリエを担いで跳び上がった。並みの跳躍力では無い。 「ディパーチャー・・!」 影はレイルの頭上を容易く超えて高い木の梢に潜り込んだ。 「・・確か、エン・シェンだよね。」 梢が震え、一人の男が顔を出した。エンだ。 「やぁ~どうもどうも!御久し振りでぇす!」 陽気な声音だが、僅かに強張っている。退き際を窺っているのだろう。レイルの隙を探しているのだ。 「持って行かれると困るんだよね。返してくれる?彼女を。」 「・・どーされるおつもりで?」 「今の所は監禁かな。アマデオや飛白みたいに。」 「あっちゃー・・まぁ当然っすよねぇ、アンタらからしたら俺達は大罪人だ。」 「良かった、分かっているなら話が早い。渡してくれ。君も一緒に来るかい?」 レイルは朗らかに問い掛けるが、隠しきれない圧力がある。 彼は問うているのではない。 、、、、、 命じている。
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