30.サイレンス

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「でも残念・・そいつばっかりは・・御免蒙る!」 エンが跳び上がった。レイルがパルスガジェットを現出させて飛翔した。エンのディパーチャーはあくまで重力負荷を軽減させる術である事に対し、パルスガジェットは振動波で飛行を可能にする術だ。空中での機動力にはどうしても差は発生する。 「あーらら・・分が悪いかねぇ・・。」 背後に迫るレイルを見やりながら、エンは呟いた。左手でヲリエを担ぎ、右手でPDAを操作する。 「じっくり撮ってたって知ったら怒られるだろうなぁ・・。」 「コメットランス!!」 プラズマが飛来してきた。エンはアクロバティックに回避し、PDAの操作を止めて缶を取り出した。煙幕だ。 「ほぅれ!」 エンは缶を投げ付け、煙を撒き散らした。その隙に森の中に潜り込む。梢をめくらましにすれば多少は時間を稼げる。 「さてさて合流地点は・・・!」 軽い足取りでエンは森の中を疾走した。戦闘は得意な方じゃない。運動も。ディパーチャーで盛っているだけだ。 「チーフ・・さっさと元気になって下さいよぉ・・・。」 黙するヲリエにエンは陽気に話し掛けた。 「いい写真があるんすよ。ベストショットばっか。早速載せましょう!レイアウトして、ゲラ刷りして、きっちり見出しを決めて、表紙をデザインして・・」 弁舌は滑らかに回る。移動速度と比例するように。 「アンタが決めてくれなきゃ始まらない。チーフとリントさんが怒鳴り合って決めるミーティングが面白くて面白くてしょうがない。だからさぁ・・アンタには、いてくれなきゃ・・・!」 エンはより速く喋った。より速く走った。 そうしなければ 、、、、、、 追い付かれる。 気配はすぐ傍まで来ていた。
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