4.ビフォア・スコール

11/22
前へ
/804ページ
次へ
「りっくん~?」 ドロシーがリクの間近まで顔を近付けてきた。 「うわっ!」 息がかかるくらい寄られて、リクは跳ね上がったがドロシーが首に回していた両腕によって制止された。 「どうしたのぉ?いきなりポーッとして。」 ドロシーは悩ましげにリクを直視する。どこからともなく鼻を芳しい香りが擽る。はだけた胸元がリクの胸に付けられる。彼女の体はリクの両腿に乗っている。胸の大きさや身長に見合わず彼女は軽く、温かい。綿の人形を乗せているようだ。 リクは軽く錯乱した。 目のやり場が分からない。ドロシーを見返せないし、俯けば眼前に谷間がある。仕方無くリクは首を無理矢理傾けて、あらぬ方向を見た。 「なん…も、無いです。ってか、放して…。」 「やぁだ。」 ドロシーは唇を舐めた。唾液とリップクリームで照る唇は艶めかしい。謎の芳しい香りがまた一段と濃くなった気がした。 ドロシーはリクを無理矢理自身へ向けさせた。 「ちょっ、ちょっとやめてください!」 「やめてって何を?何をされるって、りっくんは考えているのかなぁ?」 「ンなの…!」 リクの頭に様々な想像が過ぎる。どれも、桃色だ。 「とにかくっ!止めてくれっ!」 「だから何を?云わないとー…やめてあげない♪」 構わず、強引に、ドロシーは顔を近づけてきた。 艶っぽく潤んだ唇が迫る。 リクに為す術は無い。 リクは、食べられる気がした。
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加