30.サイレンス

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「いくら生徒会長でも無茶云っちゃいけませんぜ?!俺達はNOISE!喧噪!誰かがいる限りそこにある音だ!こんなもんで消えやしないってぇの!俺達は!俺達はっ!アンタ達がい続ける限り・・在り続ける!!」 不敵なエンの瞳はギラギラと焼けていた。きっと幾ら踏み躙っても、幾ら否定しても、いつまでも残り続ける執念。妄執。我執。形も無く、実態すらない癖に、やたら強い触感があった。 「・・そう。」 レイルは右手を振るってエンにチャージインパクトをぶつけた。エンは体を痙攣させ、失神した。小うるさい弁舌が漸く止まる。 再び静寂が戻るかと思いきや、別の声が聴こえてきた。沢山の声。聴き慣れた声。 見えない群衆が迫りつつある。その到来に、レイルの心は浮き立っていた。 「会長!」 木々の隙間から姿を現したのは筋骨隆々とした巨体だった。アッシュだ。両腕に鉄甲を備えている。 「アッシュか。君が迎えに来るとはね。」 「手間を取らせないで下さい。」 「えー。怒らないでよ。」 アッシュは溜息をついて腕を組んだ。ざっと周囲を見渡し、状況を把握する。 「サクリファイスを使用されませんでした?」 「そうだね。一瞬だけ。色々手間取ってね。」 「何が起こりました?」 「後で説明する。月虎とアルフレッドは?」 「此方で収容しました。NOISEのメンバーが此処に転がっている奴を含めて三人、捕えました。」 「そう、ありがとう。」 レイルはスタスタと歩き出した。挨拶する執行部員に笑顔を返しながら。 アッシュは目を細めた。 今のレイルは普段のレイルだ。柔和な笑顔を振りまき、陽気で朗らかな調子で話す。 だがさっき、一瞬垣間見たレイルの表情は違っていた気がする。あの夜、リーシェンの始末をする時のレイルに似た冷徹さを持ちつつも、孤高を持っていた。仲間を大切にすると謳うレイルがもち得る筈の無い、強迫的な孤高が。 背中が、小さく見えた。 年相応の少年のそれと、同じように。
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