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白々しい程までに明るい男の笑顔に老人は驚いたままだったが、舌打ちして背中を向けた。
「もう沢山だ。貴様らもアドルと同じ、イカレだよ。」
「鏡を罵ると・・」
「喧しい。残りの金は例の口座に振り込む。貴様らとはこれで縁切りだ。」
老人はツカツカと歩き、部屋から出て行った。
「・・依頼完遂でいいの?アルファ。」
「あぁ、お疲れさん、マルタ。」
アルファこと、エージェント・アルファは整えた髪を崩しながら女、マルタ・ヘッジホッグに笑い掛けた。すると今まで無表情でいたマルタが途端に鬱々とした面持ちになり、アドルを拘束しているベルトを外し、アドルの死体を手術台から押し出して腰掛けた。
「はー、詰まらなかった。小っちゃい私怨に小っちゃい戦争。金も手間も安すぎて、張り合いが無いわ・・。」
「お前の得物を使う程じゃないのは確かに残念だったねぇ。殺ったのは精々二十人。ペギーワイズの方がもっと殺している。」
「二度と御免よこんなの・・虚しすぎて鬱になる。」
アルファは笑いながら、リボルバーの弾を充填し始めた。アルファの使うリボルバーは銃身が長く、弾も大きい。くすんだ銀色の様は数々の戦場を当たり歩いて来た経験が宿っていた。
「さて、ボスが此処に来るとか。向こうから連絡が着くなんて珍しい。」
「面白い任務でも拾ってきたの?」
「答えは彼の口から。もうじき来るさ。」
アルファの言葉と同時にドアが勢い良く開け放たれた。中にズカズカと入り込んできたのは大柄な男だ。ボロボロの革のコートの下にはこれまた古びた軍服を纏っている。荒々しく波打った髪、狼のように鋭く、凶暴そうな顔。包帯を巻いて左目を隠している。
「やぁ、グラン。」
「アルファ!あの糞詰まんねぇ爺は帰ったか?」
グラン・ジールは血糊で汚れた床にも構わず、ドカッと腰を下ろした。
「グランが来たじゃない。嘘吐き。」
マルタは鬱屈とした視線でグランを一瞥すると、溜息をついて項垂れた。
「ンだよマルタ。てめぇ何白けてんだ。また抱いてやろうか?よがったお前がまた見てぇ。」
「止めてよ・・あれから私具合悪いんだから。あぁ、アンタのせいか。最悪・・。」
マルタはぶつぶつと恨み節を云うのを見てグランは頭を振った。
「このアマ、犯してやろうか。」
「グラン。おイタは大概に。」
アルファがにやけながらグランを諌めた。グランはジロリとアルファを睨む。
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