31.闇に沈む

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「異論は認めん。依頼は既に受領された。始まりだ。」 ボスがサングラスに手を当てた。 「空いた器にそれは注がれた。並々と器を満たし、脈々と震えている。我々は器の傾くままに思考し、行動し、対処する。 我々を我々たらしめ、我々を異なる位相へシフトするもの。 それは『魂』だ。」 アルファ、グラン、マルタは黙り込んだ。ボスの言葉の一つ一つには威厳が宿っていた。 「我々はそれを持たん。この手にもこの胸にもこの頭にも。在るべきそれが無いまま、我々は上澄みのような衝動に生かされている。 だがそうある故に。そうある為に。我々は動くのだ。他の魂の憑代となり、精神の然るべき器として行動する。我々はこの使役を通して知るのだ。我々の在り方を、我々の行先を。 愚鈍と渇望の狭間で我々は踊る。狂い咲き、奮い立つ。」 アルファ、グラン、マルタの顔が活気に満ちていく。内側から沸き上る狂気めいた欲求に。 「さぁ、戦争だ、諸君。 戦争は国家間でするだけでは無い。個人間の争いも戦争と同じそれだ。同じだけの重要性を持ち、同じだけの激しさを持つ。我々はその手助けをするのだ。 では、戦争だ、諸君。 一切の加減無く、一切の躊躇無く、一切の容赦無く。魂の求めるままに、魂が蠢くままに、駆逐せよ、蹂躙せよ、破壊せよ。 不退転の名の下に、不倶戴天の義の下に。 故に、我々は道具。    、、、、、、、、 故に、我々はマテリアル。」
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