1.闇に踊る

8/15

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/804ページ
ベッドの上でシオ・クォールは横になっていた。シャツと黒いズボンだけの格好で冷房が効いた部屋にいると心地良いが、シオの気分が安らいだ訳じゃない。 監察員の寮は生徒のそれより殺風景だ。簡素で機能性のみを追求したデザインの部屋にはベッドとデスク、椅子しか家具は無い。監察員それぞれが荷物を持ち寄って思い思いに模様替えしていくのだが、生憎シオの荷物は全部生徒の寮の方にある。身一つでシオは此処で過ごしていた。 あの合宿の時、保健室に運ばれたシオは外傷こそ軽かったが精神的なダメージは深刻であり、暫くペネロペの元に預けられていた。シオの為に帰郷を先延ばしにしたシェリルやラウル達NOISEの面々が何度か見舞いに来たのが効いたのだろう、シオの回復は早かった。皆矢継ぎ早にシオの症状を尋ねていったが、シオはちゃんと答えられなかった。はぐらかしていた節も多少あるが、シオにも自分の状況を上手く説明出来ないのだ。自分の中に他人がいると云う事など、人に気安く話せない。 だがヲリエに凄まれて正直に白状した。シオは話したく無い気持ちが大きかった。話せば歯止めが効かなくなる気がする。認めれば、自分の中にいる誰かがより肥大化するような気がしたからだ。シオの状態と、頭に巡る記憶の断片を知ったヲリエはシルトと顔を見合わせ、それ以上は問わなかった。ヲリエにしては珍しい、心底驚いた顔だった。 結局七不思議の真実は分からなかったらしい。シオの情報を得た上でも誰が設定したのかは分からなかった。都市伝説の大元なんて調べるだけ無駄だと、リントは云っていたが、ヲリエは終始悔しそうだった。 合宿から二週間後、NOISEの面々が帰郷してからは状況は変わった。 シオが安定化したのを目処に監察員達がシオの本格的な検査に乗り出したのだ。シオには喜ばしくない事だった。 、、、、、、、、 シオが見つかった時もそうだった。何ら説明もされぬまま検査、検査、検査。血圧、脈拍、採血等健康診断のような身体検査からロールシャッハテストのような心理テスト、体力測定、魔力測定etc…。 今回は頭に説明が挿入されただけでまだ良かった。シオがアンセムとの接触によって発生した変化、体や魂への影響の調査。ペネロペが何時ものように快活な口調で云った。
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加