4.ビフォア・スコール

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「…破廉恥。」 不意に投げかけられた冷めた一声がリクを現実へ引き戻す。 「わたたっ!」 素っ頓狂な声を上げてリクはドロシーを押し返した。 ドアの開けて、冷めた眼差しを向けていたのはルキア・オールバーンだ。切り揃えられ、丁寧に櫛が入れられたワイン色の髪に切れ長の目つき。ワインレッドの瞳が妖しく輝く。 部屋に入ってきた彼女に追随してきたのは筋骨逞しい大柄な青年、アッシュ・ウィングス。 リクは両方面識がある。ルキアは弓手四の指、アッシュは生徒会二年生の代表格5 in 2のメンバー。それぞれ立派な地位を持った大物だ。 「はしたない事この上無いわ。色気より緊張感を持って頂ける?」 「うー。いい所だったのにぃ。」 またリクを抱き寄せてドロシーは頬を膨らました。 「もう勘弁して下さいよ!」 リクはドロシーを腿の上から降ろし、立ち上がって離れた。降ろされたドロシーは口惜しそうに、大人しく椅子に座る。 「まず自己紹介しましょうか。私はルキア・オールバーン。此方はアッシュ・ウィングス。面識はあるでしょうから手短に済ましましょうか。」 ルキアは全く親しみが無い冷淡な自己紹介を唱えながら腰掛けた。アッシュはドアの側で番兵のように立ち尽くしているままだ。口を引き結んで無表情でいる様は威圧感だ。 「掛けなさいな、月白リク。立ったままでは話しにくいでしょう?」 「あ、はい…。」 リクは慎重に椅子に腰掛けた。本能が警戒を呼び掛けている。この二人は詰問の体を作っているが内側に殺気を秘めている。此方の出方次第では戦闘も辞さないと示している。
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