31.闇に沈む

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『・・もう良いか?通信は以上にする。』 「あぁ、付き合わせて悪いね。」 『機を見て終止符は打つ。我々とてこれ以上手を拱いてはいられない。』 「やり方次第だよ、君達の。」 オブライエンは深々と煙を吐いて、葉巻を潰した。 『理事長。私も一介の大人だ。どうすべきか、どうあるべきかは心得ている。 、、、、、、、、、 全ての報いは果たす。』 「オブライエン?」 理事長が問いかけるより早く、オブライエンは通信を切った。 書斎に沈黙の帳が降りる。が、ディスプレイにまた新しい、音声のみの通話が入った。 「私だ。」 『ベルクロフト・ラージッドです。』 「やぁ。首尾は?」 『シオは回収しました。すぐそちらに。』 「ありがとう。」 『例のスパイはどうします?無残な姿をお蔭で奪還は多少楽にはなっていますが。』 「放置しておいていい。人質の価値が無い事は彼らも分かっているだろう。」 『酷な事で。では後程。』 通話を切り、理事長は立ち上がった。窓の傍へ寄る。 空は昏くなろうとしていた。陽は徐々に傾き、昼間の明るさを西へ仕舞い込んでいく。暑さも尾を引き、湿気と微妙な涼やかさが代わりに空気中に分散する。 「さて、どうなるか・・。」 シオと何を話そう。 理事長の頭の中はそれで一杯だった。
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