4.ビフォア・スコール

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「じゃああたし達は帰…」 用件が済んだならと、ドロシーがサッと立ち上がろうとした寸前、ルキアは指を鳴らした。 せるとルキアの背後から大量の透明な帯が現れ、部屋中を覆った。 クレパス。 空間や物体を断つ魔法。 「なっ?!」 「お座りなさい。」 リクが立ち上がるのを鋭くルキアは制した。椅子に座したまま、冷徹な光を目から放つ。 傍らのアッシュは両腕を広げて指の関節を鳴らした。無表情だが目に闘志が宿っている。 部屋の中の空気が一変した。 「なぁにぃー?これ。」 和やかにドロシーが首を傾げたが、目は笑っていない。 「予定を変えましたの。事が済むまで今暫く捕まっていて下さいな。運が良ければすぐに終わるわ。難なら協力して頂いてもいいけど。」 「どういう事だ?!」 「狩りよ、月白リク。森の奥深くに隠れた鼠を捕まえる為の狩り。無情で非情な、ね。」 冷たく云い放ったルキアは薄く笑った。 「やだぁ、あたし達アマデオくんを助けないようにカンキンされたって事ぉ?」 「くそっ…!」 リクは歯噛みした。 ルキア達の狙いはすぐ分かった。リクやドロシーを確保し、勢力を割いた上でアマデオ達を一気に叩き潰すつもりだ。 しかし目的を把握できても現状を打破する手段は思いつかない。武器も逃げ場も無い上に相手は手練れが二人だ。クレパスで隔離された以上ドロシーのワープも使えない。 リクは歯噛みしながらも、徒労に終わるかもしれない打開策を思考し続けた。
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