4.ビフォア・スコール

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「やぁ同志!アフタヌーン・ティーでも飲むか?!心地良いざわめきが胸を満たす夕さりに乾杯だ!」 授業を終え、アジトに入ったスヴェインを出迎えたのはアマデオの嬉々とした声だ。場所は廃棄コロニーでまだ空間操作魔法が働いている部位にあるうらぶれた展望台。割れたガラスや朽ちた望遠鏡が散乱し、床は傾いている。アマデオは窓の側に備え付けられた手すりに乗り、破れた窓からの風を浴びていた。 露骨にスヴェインは顔をしかめた。 「うっぜー。」 「おや、素知らぬ顔か?またまたぁ。気付いているんだろぉ?」 「…奴らか。」 スヴェインは手すりの側に立つ。 地に落ちたプラントからの見晴らしは悪い。木立より低く、揺らめく枝葉が視界を埋め尽くしているだけだ。鬱蒼と生い茂るそれらのせいで日光も届かず薄暗い。濃密な生の匂いはそれだけでプラントを隠してくれそうだ。 しかし今日は森が震えているようにスヴェインは感じた。歪で、不気味な震えだ。 此処まで来る道程でスヴェインは不気味な監視を察していた。今日の復帰の時からサンドハースト内で面倒な視線や噂は四方八方から浴びていたが、この監視は酷く生々しいモノ感じた。それが何らかの策略に繋がっていると念頭に置いてスヴェインは動いている。 案の定だった。 アマデオが誇らしげに語る姿を見るならどうやら予感は的中したらしい。アマデオは根拠も無く機嫌を良くする程単純な人間では無い。
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