1.闇に踊る

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だがそんな事務的な説明にシオは欠片も納得出来なかったが、内心に押し隠した。案の定、検査が終わってから詳しい結果が届けられた訳では無い。ペネロペに直線問い質したが理事長命令で話せないと云う。他の監察員も同じだ。ならばと理事長の元へ向かえば当の本人はユニオンへの出張で不在。 結局シオは自分の事を分からずじまいだった。 しかしなんら標も無く放り出された訳じゃない。 ベルクロフトに問い質した時の返答。 「シオ、私達に聴いた所で得られるのは端から見た君の情報だけだぜ?それでいいなら、私の一存で幾らでも教えてやるよ。だけど恐らく今の君に話した所で意味は無い。 なぜかって?簡単さ。今の君がそれを理解して答えを出せる状態じゃないからだ。分かるか?シオ。自分をちゃんと理解してやれるのは自分だけだ。勿論他人が理解してくれる部分も大きい。だけど自分を使うのは自分だけ、だからちゃんと理解して使わなきゃならない。 分かるね?シオ。今のお前は甘えている。どうしようも無い現状に道筋を求めているだけだ。それは駄目なんだよ。自分で道を拓かなきゃ。 シオ・クォールが生きる未来は君が代拓かなきゃ意味が無いんだ。 手段は何でも良い。時間もたっぷりある。 ゆっくり自分を固めてみるんだ。 それが出来た上で、また聴きに来るんだね。」 これが標になるかはシオには分からない。云い回しこそ独特だがベルクロフトなりの優しさが籠もっているんだろう。 それは、分かる。 ベルクロフトの事は多少は理解している。 だけど今のシオにはどうしても癪に障るものがあった。 自分の出生や監察員にいた過去で他の生徒に対し後ろめたさを感じていたシオにとって、監察員でも疎外される事は堪らなく嫌な事なのだ。
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