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「考え過ぎよー、リント。禿げるよ?」
冗句を交えながら軽く返すヲリエにリントは目つきを変えた。
「その能天気!余計な面倒を引っ張って来ないかに心配している俺をいっつも無視してんだ、アンタは!」
「短気ぃ~。」
「ああぁ~!アンタねぇ!アイリスなんて名前名乗らせている時点で曰わく有りまくりでしょうが!」
終いに作業を中断し、立ち上がって騒ぎ立てるリントにヲリエは冷静に返す。
「だからだよ。あたし達の世代が敏感になる名前を持った人間を誰かが送り込んで来たって事は、
、、、、、、、
気付いて欲しいって事でしょう?」
「そしてロクでもない展開へ導きかれるって話ッスよね?」
「決めつけないの。どうなるか分からないのに。」
リントは椅子に腰掛け、仕切りに唸り出した。
ヲリエはスくっと立ち上がり、デスクに飛び乗った。デスクの上に散乱しているチラシが動いて舞い落ちる。
構わずヲリエは踏み出る。歩を重ねる毎に書類が動く。リントは注意しようとしたが口を噤んだ。
ヲリエの佇まい、前進する様が堂々としていたからだ。これが威風と云うモノだろうか。決して力んでいる訳では無い。ただ彼女の内なる何かが四肢を通じして放たれている。
「仮に、アインの背後にシルクがいるとする。その他、レイやブルーノがいるとする。なら、これは必然だと思うじゃない?」
ヲリエは静かに云った。背後でシルトは耳をそばだてている。
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