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「…必然が幸せに繋がる保証は?」
リントは皮肉を込めず、淡白な調子で訊いた。
「それは、誰にとっての幸せ?」
リントは口を開きかけて、閉じた。ヲリエを見据えたまま、押し黙る。突き抜けるくらい、見つめている。瞳は狂おしいくらいヲリエに視線を向けているが、口はあくまで沈黙を貫く。
「あたしは、サンドハースト全体の幸せって思いたいな。欲を云えば、あたし達の幸せかな。」
ヲリエはリントの瞳が酷く歪んだような気がした。否、瞳は歪まない。だが、顰めっ面の顔にある瞳が滲んだように見えて仕方がなかった。
ヲリエは胸の奥が締め付けられる心地がした。リントの視線は鈍い光を放ちながらも、鋭かった。
「今、あの人達と再会するのは重要だと思う。今のあたし達は行き急いでいるかもしれない。一度立ち返る事も必要なんだ。」
「逆効果になるんじゃないすか?誰だってそうだ。過去に今を侵されたくは無い。」
「しっかり立てばどこから押されても倒れないよ、人は。」
ヲリエはリントの前に立った。足でパソコンを退かす。ゆっくり屈み込み、リントの顔を正面から覗き込んだ。はだけた胸元やスカートが翻って垣間見える下着が眼前に迫る。リントは顔を反らそうとするがヲリエの瞳はリントを放さない。視線が鎖のように絡み付き、リントを拘束する。
「そう思わない?」
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