5.コーリング・ユー

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「…大馬鹿だ。」 リントは呻くように、返した。ヲリエは微笑んで立ち上がる。 「そーだよねー。あたしもそう思う。」 「おまけにナンセンスだ。」 リントの呻きは続く。力無く、唱えられていく。 「殴って気持ちを伝えるなんて、野蛮だぜ。」 「好きに云って。 あたしはそれしか知らないし、それが一番だって思っている。」 リントはうなだれた。 降参だ。 彼女の意志は固い。説得は無理だ。 いや、初めから分かっていた。彼女の説得など無理だ。 端から見たら彼女は独善的だ。一つの組織からはみ出てがむしゃらに突っ込む。誉められた行為じゃない。 だが、この行為は間違えじゃない。 切り札だ。 歯止めが利かない人間は殴ってまで止めなくてはならない。善悪、正邪の問題のみに止まらず、この切り札は最大級の力を発揮する。理を超越して人に意志を伝える究極的な手段だ。 無碍には出来ない。この手段がどれだけ有効だと云う事も理解している。何より、ヲリエはこの手段に全てを賭けている。その全てを、彼女が賭けている想いをリントは知っている。 知ってしまっている。 リントにヲリエの想いを潰す事は出来ない。 だが厭わない気持ちはあった。罪悪感を負っても、厭わない覚悟はあった。 リントにも、譲れないモノが確かに宿っている。
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