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「…セカンドアドレフォレストの阻止。」
編集室の空気が静寂に染まる。一瞬の内に空気は静寂に染め上げられたが、次第に滲むように小さな喧騒が疼き出す。編集室にいるNOISEのメンバーの思考が目まぐるしく動き出したと誰もが分かった。口に出さずとも、動きにせずとも分かった。只ならない緊張が着実に空気を浸食している。
「…誰の差し金?云い方は悪いけど。」
ヲリエは淡々と尋ねた。一番心を揺り動かされている筈の彼女が最も冷静に見えた。
「私は、シルク・アイリスの仲間です。」
「シルクさん…。」
重々しくヲリエは名を反芻した。ラウルが目つきを変える。
「シルク・アイリス…?!元両ノ手弓手四の指の、あの…?!」
「流石ラウル、知ってた。」
ヲリエが微笑んでラウルを見やった。
「兄さんから聴いた事あります。ウェルキン・ファウストの…恋人だって。」
「兄さん…?」
アインがラウルに向いた。ラウルは思わず背筋を伸ばした。アインと真っ正面に向き合ったのは初めてだ。
「僕より前にルーイ・クラウスター・ジュニアを名乗っていたんだ…。本名はブルーノ・クラウスター。」
「ブルーノ…。君、ブルーノの弟…。」
「兄さんを知っているの?」
「いつもからかわれる…。」
恨めしそうにアインが云ったのをヲリエが笑い飛ばした。
「あの人らしいな。元気なんだ?」
「嫌なくらい。」
「兄さんが、君の仲間なのかい?!」
ラウルはアインに歩み寄った。興奮しているようだ。
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